令和2年第1回定例会 一般質問
令和2年第1回北部上北広域事務組合定例会において、
赤垣 義憲議員より一般質問通告がありました。
赤 垣 義 憲 議員
〇公立野辺地病院における地方公営企業法の全部適用の必用性について
- 病院の経営改善、組織の健全化が最重要課題とするならば、「全部適用」にしなければならない明確な理由を提示していただきたい。
- 一戸和成氏についての実績、功績や病院事業管理者として招聘する理由について
管理者 野 村 秀 雄
それでは、赤垣議員のご質問についてお答えをいたします。
1点目の全部適用とする理由についてですが、野辺地病院の経営状況については、今年度の決算見込みで資金不足額が3億1,000万円、率にして14%という危機的状況にあることから、現行の病院の運営形態である地方公営企業法の財務規定だけの適用は限界があるものと判断し、今般、比較的に時間をかけずに移行できる全部適用を選択したところでございます。
地方公営企業法の全部適用の最大のメリットは、病院事業を総括的に管理する病院事業管理者の設置により、病院組織の指揮監督を行うことにあります。病院運営という公営企業の運営に専念できる者が管理者となることから、より機動性が確保された経営を行うことができるものであります。
一方、一部適用の大きな弊害として、病院長には予算、人事について決定権がないため、近年目まぐるしく変化する医療制度改革等への改革の流れへの迅速な対応などについて、リーダーシップを発揮することが困難と言われております。
全部適用を行っている成功事例を見ると、多くの病院が医療・経営・行政にノウハウがあり、かつリーダーシップのある医師を確保できていることであり、まさに全部適用の実施に当たっては病院事業管理者の確保がキーポイントとなるものと考えております。
議員の皆様には、これまで勉強会や議員全員協議会を通じ、全部適用についての理解が深められるようご説明してまいりました。今後とも、あらゆる機会を通じ、丁寧に説明を行ってまいりたいと考えており、何卒、全部適用を選択した理由をご理解の上、よろしくお願いをいたします。
2点目は、一戸氏の業績や病院事業管理者として招聘する理由についてであります。
一戸氏は、弘前大学医学部大学院を卒業後、平成14年4月からは厚生労働省に入省、平成26年度には本県に健康福祉部長として出向なされ、現在は京都市役所に勤務をしております。議員ご指摘のとおり、一戸氏におかれましては臨床経験が少ないことや、病院での経営実績がないことは否めませんが、私は一戸氏とこれまで数回お会いし、厚生労働省での仕事の内容や業績等を確認することができております。
一戸氏は厚生労働省において、診療報酬の制度設計に携われたことから、日本医師会、自治体病院関係団体、民間病院の病院長を対象とした研修会等に、数多く講師をお務めをしていると伺っております。
また、国の医療計画の策定に携われ、医療政策や医療制度改革にも数多くの知見がございます。このほか、医療・介護政策の研究事業を行っている国の外郭団体の報告書委員、医療機器業界のコンサルタント、医療関係雑誌への連載や投稿などの幅広い活動を行っているものと伺っております。
いずれにしましても、一戸氏は診療報酬制度に熟知され、厚生労働省では第一人者とも言われております。この診療報酬は、2年に1回の改定が行われ、我が国の医療のあるべき方向性を示すものでありますが、この方向性に乗り切れない場合には増収につながらず、経営上マイナス要素となります。経営実績があっても、診療報酬の仕組みを理解していないと効率的な病院経営は成り立たないものです。
既に私からは、一戸氏に野辺地病院のあるべき姿や今後の経営方針の作成を指示しており、4月の赴任とともに全部適用に向けての準備体制を加速させたいと考えております。
6月の臨時議会に先立ち、5月中旬には総務民生常任委員会を開催し、病院事業管理者予定者である一戸氏の出席のもと、今後の野辺地病院のあるべき姿や経営方針等を説明させることと予定しております。私としては、一戸氏であれば野辺地病院の経営を立て直すことが可能であると信じており、病院事業管理者に適任であると考えております。
7月から、病院事業に地方公営企業法の全部を適用させたいとおり考えておりますので、何とぞ議員各位のご理解、ご協力をいただきたく、よろしくお願いを申し上げます。
沖 津 正 博 議員
○新型コロナウイルスの対応について
- 新型コロナウイルスの対応について、これまでに感染疑いの患者が来院されたあるいは相談を受けた事例があるのか。また、今後疑い患者が来院した場合に本人や院内での対応や相談への対応策について
○組合行政や議会だよりについて
- 各町村においては「広報誌」や「議会だより」により住民に情報発信されているが、組合にはホームページがあるものの、広報誌等は発行されていないことから、今後、発行する予定はないか伺います。
○野辺地病院の全部適用等について
- 全適や経営改善策における職員の疑問にしっかりと応え、信頼関係を高めていく構えを示していくべきでないか
- 全適の後、将来的に野辺地病院の地方独立行政法人化を考えているのか。また、経営が安定しないのであれば、病院の診療所化もありうるのかについて
管理者 野 村 秀 雄
それでは、沖津議員からの質問にお答えをいたします。
まず、1つ目の質問の、野辺地病院における新型コロナウイルスへの対応についてでありますが、地域において新型コロナウイルス感染症の 疑い例に合致する患者さんが医療機関を受診した場合は、当該医療機関は管轄の保健所に速やかに電話等で連絡することになっております。野辺地病院では、新型コロナウイルスに感染したのではないかと相談を受け、上十三保健所に連絡した例が2件ありますが、相談内容の例としては、高熱が4日間程度続き、不安を抱いた患者について、新型コロナウイルスに感染している可能性があるか否かを診断するため、レントゲン撮影を行ったところ、肺炎の疑いが見受けられ、病院から保健所へ連絡を行ったものです。
このように感染症の疑いが見受けられる患者さんに対しては、疑い例に該当する場合は、必ずマスクを着用の上、受け付けに申し出るようにとの案内を行っているところです。
一方、院内における感染防止策としては、病院は新型コロナウイルス感染症にかかるリスクの高い場所であることから、厚生労働省が定めた基本方針にのっとり、比較的病状が安定し、定時の投薬処方を希望される患者さんや医師が必要と認めた場合には電話診療による処方箋発行を行っており、院内における感染防止に努めているところでございます。
また、これらの対策のほか、病室への面会の制限はもとより、不測の事態に備え、特別治療室の整備を進めているところでございます。
2つ目の組合行政や議会だよりについてでありますが、当組合の広報紙は平成25年4月に第1号が発行され、平成27年7月の5号まで地域住民と情報を共有する役割として発行されておりました。広報紙の発行には、印刷・製本したものを構成町村へ毎戸配布を依頼し、手交で地域住民へ配布しておりましたが、コストの削減及び配布労力軽減並びに迅速性を高めるためホームページを開設し、当組合の情報発信は全てホームページに掲載することになり、現在に至っております。
しかしながら、ホームページの特徴はインターネット環境さえあれば広範囲に誰もが自由に閲覧できるものの、高齢者層を中心に使えない方、ネット環境が整っていないことを理由に情報を得られない場合が考えられるものであります。情報技術の発展により、インターネット網を利用する広報には、さらなる可能性が生まれるとは思われますが、幾つかの課題も挙げられ、さらなる検討が必要であると認識しております。このことから、今後、当組合では広報紙等の発行を視野に情報発信のための媒体バランスを考え、より多くの地域住民に情報発信できるよう努めてまいります。
3つ目のご質問、1点目の趣旨は、全部適用や経営改善策における職員の疑問にしっかりと答え、信頼関係を高めていく構えを示していくべきではないかとの質問についてでありますが、全部適用に関する職員説明会は、これまで2月25日、3月13日の2回にわたり行い、合わせて170名の出席があり、職員数の約3分の2が参加したこととなります。説明会の内容としては、事務局長から全部適用に関する仕組みやメリット・デメリット等の説明をした後、職員からの質疑を受け付けたところです。
職員からの質問の幾つかを挙げると、全部適用に伴う影響について、職員は非常に不安がある。経営を重視する観点から、職員の給与カットを行うのか。また、給与カットを行わないという保障はあるのか。一つ、人件費率が70%近くとなっている。全部適用後、職員の給与カットを行わないで、どのように経営改善していくのか。また、給与カットのほか、職員数の削減も考えているではないか。病院事業管理者はどのような手法で野辺地病院の経営を立て直そうとしているのか。管理者の経営方針はいつわかるのか。そして一戸氏は、どこかの病院経営に携わった経験はあるのか。また、病院経営に実績がない人材をどのような理由で採用することにしたのか。などでありました。
また、冒頭の提案理由の中でお話ししたとおり、4月に入って早々に病院事業管理者予定者である一戸氏を交えた職員説明会を開催することとしており、私も参加の上、職員の疑問に対して丁寧な説明をしていくこととしております。さらには、6月臨時議会に先立ち、総務民生常任委員会を開催させていただき、議員の皆さんの一層の理解が深められるよう、一戸氏から今後の経営方針を説明させることとしております。
いずれにしても懇切丁寧な説明のもと、職員や議員の皆さんとの信頼関係構築が重要であると考えております。
3番目のご質問の2点目の趣旨は、全部適用の後、将来的に野辺地病院の地方独立行政法人化を考えているのか。また、経営が安定しないのであれば、病院の診療所化もあり得るのかについてでありますが、まずは公立野辺地病院に地方公営企業法の全部適用を行い、経営の安定化とともに、地域に求められる病院づくりを目指すものであり、現段階から全部適用の後は地方独立行政法人の仕組みを導入するという考えは持っておりません。なお、資金不足がある中で、独立行政法人化への移行はできないこととなっております。
地方独立行政法人への移行は、法の全部適用に比べ、より採算性が求められるものであり、病院職員の身分の変更を伴うことや、職員の給与体系にもメスを入れなければならない可能性があり、安易に行うことを考えておりません。より慎重に検討されなければならないものと考えております。
また、経営の安定化が図られれば、課題である施設の耐震不足や老朽化に対応すべく、施設の建てかえを検討したいと考えており、現時点では病院の診療所化というネガティブな考えは持っておりません。
私は就任間もなく、弘前大学医学部の関係教授と面談を行い、野辺地病院は地理的に重要な病院であるとの認識を持っていることを確認しております。全部適用に伴い、病院運営の権限は病院事業管理者に移行することとなりますが、私は病院の開設者として、病院事業管理者と定期的に意見交換し、病院運営に対する課題や将来的なビジョンを共有しながら、よりよい方向に持って行きたいと考えております。